インクスの3つの原則

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他の大手流通企業は外部に委託しているのである。

SとSの事例は、同じ多頻度小口といってもそれぞれの企業が持つ固有のオペレーション上の問題からその要請が生まれていることを教えてくれる。 その点で以下で紹介するMの例も同じである。
Mの愛称で呼ばれるMは、32年、千葉県松戸市で創業したドラッグストア(薬局)である。 90年8月には株式の店頭公開を果たし、99年8月には東証一部に上場している。
また物流面では、共同配送を95年にスタートさせている。 以上のような企業概要を持つMであるが、近年、一日のうち3度配送を行う多頻度小口の物流体制を導入している。
この一日3度の配送が必要になった背景には、Mの都心への進出がある。 Mが都心へ進出する転機となったのは、上野のアメ横への出店であった(87年7月)。
たまたま物件があって出店したが、そこで大成功をおさめたのである。 お客が入りやすい店構えの工夫、商品陳列を工夫した上層階への顧客の誘導など、アメ横店でMは都市型店舗の運営ノウハウを得る。
そしてその後、渋谷(91年)、池袋(92年)、新宿(95年)、銀座(99年)などへ次々と出店していったのである。 例えば、渋谷店については、「Mのレシートに好きな男子の名前を書いて店長に破ってもらえばその恋が成就する」といった噂が女子高生の間に広がりブームになった。
そのようなブームが生まれるほど、Mの都心での存在感が高まっていったのである。 このような都心店向けにMでは、98年から一日三度の配送をスタートさせている。
一日3度の配送となると、コンビニエンス・ストアの惣菜・牛乳、お弁当といった日配商品と同じである。 では、Mとコンビニエンス・ストアは同じ考え方で在庫管理や物流管理を行っているのだろうか。

そのような視点で見ると、Mとコンビニではいくつかの相違点があることに気づく。 まず、コンビニエンス・ストアの主要顧客が男性であるのとは対照的に、Mの主要顧客は女性である。
特に、渋谷や池袋、新宿、銀座といった都心型店舗では、10〜20代の女性が主要顧客であるという。 次に、品揃えの多さもMの特徴である。
店舗で扱うアイテム数はコンビニが通常2千800アイテムであるのに対して、Mでは、8千種類程度、渋谷店ではさらに多い1万5千アイテムの商品を扱っているという。 特に都心型店では日用雑貨や化粧品の品揃えが充実している。
女性の場合、日用雑貨や化粧品へのこだわりは男性とは比べものにならない。 「私のやわらかい髪では、どうしてもこのように少量多種の商品陳列を行っていると、特に売れ筋商品については店頭への補充を頻繁に行わなければならない。
渋谷など店舗自体の面積が狭く、お客の数が多いところでは、なおさらである。 そこで、Mでは、98年2月に埼玉県吉川市に物流センターができたのを機に、都心店に対して一日3度の配送を行うようになった。
ちなみにこの吉川の物流センターは丸和という運送業者にアウトソーシングしている。 「本当は3〜4フェース取っておけば補充は楽です。
しかし、なるべく1フェース、取っても2フェースぐらいに抑えています。 1フェースにして少量多種、いろいろな顧客の要望に合うような品揃えにしています。

また、売れない商品があっても、その商品をカットするのに時間をかけます。 もちろんPOSで商品管理をしていますが、コンビニほどシビアではありません。
それ××社の00でないとダメ」という具合である。 そのようなお客の要望を満たすためには、売れ筋商品であっても売れ筋商品でなくても一フェースしかさかない。
コンビニのように売れ筋商品でなければ発注をカットし、売れ筋商品に多くのフェースを思い切ってさくということはしないのである。 ディマンド・チェーン経営を実践している流通企業は、物流においても革新を行ってきた。
それは、「多頻度小口物流」という言葉で呼ばれるものである。 この「多頻度小口物流」という一言で表現される物流革新であるが、実はその中身は各社によって異なっているというのが本章の主張であった。
具体的にいえば、Sは、店舗の狭さ、商品の鮮度、需要変動といった問題に対応するために多頻度小口物流を導入した。 それに対して、Sは超郊外立地、小商圏といった問題に対応するために多頻度小口物流を行った。
また、Sにおける多頻度小口物流はベンダー・店舗間でのものであったが、Sでは、自社店舗間におけるそれであった。 Mにおける多頻度小口物流の例も紹介した。
そこでは、顧客ごとに異なる多様なニーズに対応した多品種少量陳列を行うため、物流の多頻度小口化が行われていた。 以上のように、ディマンド・チェーン経営を実践している企業は、それぞれのビジネスモデル上の固有な問題を解決するために多頻度小口物流を行っている。
ここで最後に強調しておきたいのは、特にSとSが物流の低費用化を実現するために、複数のベンダーを客にとっての店舗の魅力度を引き上げる。 そのために、一日3度という多頻度小口物流を導入したのである。

もちろん、発注インターバルが短くなることで確保されるのはより新鮮な商品を店頭に並べることができる可能性であって、生産・供給体制がそれに対応したものでなければその可能性が実現されない。 定時に配送できれば、その納品時間に対応した形で店の従業員を配置できる。
そこでSは定時配送を実現するため、計画に沿った発注を自身で努めた。 そしてそれと同時に最適配送コースの設定をベンダーに要請した。
実はそれまでは、道路の渋滞だけでなくトラックのドライバーが自身の判断で配送コースを決定していたことも定時配送を実現できなかった大きな要因だったのである。 そこでドライバーの判断によらない最適配送コースの設定がSとベンダー間で探られたのである。
このような工夫によって、Sでは定時配送が実現されるようになった。 店が小さく、納品後すぐに陳列の作業をしなければならないコンビニにとって定時配送が実現したことは重要な意義があった。
もちろん、店舗への配送台車数の減少は、ここで紹介している以外にも、トラックが出す排気ガスの問題や道路渋滞の問題を緩和し、店舗側で荷受けに必要な労働者数と時間を節約する効果を持っている。 ここで紹介した物流革新をSは米国でも実践している。
IYグループの社内報、4季報によると、S社(現S・I社)は93年に自社の物流センターをすべて廃止し、大手物流会社マクレーン社に物流業務を委託した。 ちなみにマクレーン社は米国最大手の小売企業W社の100%出資子会社で、米国全土の3万店以上の小売店に商品を供給している。

当時、物流センターは利益を計上するために、Sの店舗以外にも商品を供給するようになっていた。 ところが、利益性を追求するあまり、取り扱う商品が加盟店のニーズから離れてしまったという。
その結果、加盟店は仕入れの半分もセンターを利用しない状態になっていた。 どんな商品を供給しても売れる時代ならともかく、買い手市場の時代では、物流センターをプロフィットセンターだとする考え方は成り立たない。
S社はむしろコスト・センターという発想が必要だと考えたのである。 そこでマクレーン社に物流を委託する。

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